読書レビュー「ソナタの夜 / 永井するみ」

愛しているから、私が、嘘をついた。結婚をせずに関係を続けるということは、相手に何があっても知らずにいるという不安を一生涯背負うこと。いとおしく、切なく、親密なのに遠い。表題作のほかに6編を収録。それぞれの恋愛に隠された「たくらみ」と、狂おしいほどに切実な想いを、濃密に描いた短編集。(裏表紙紹介より)

 

目次

感想

不倫、ふりん、フリン。

なかなかソレに関して厳しい世の中になりましたね。

「不倫は文化」なんて言葉はもう完全に葬られました。いやいや、いいことだと思います。この言葉を聞いたときは「こいつ頭おかしいんじゃねーか」と思いましたもん(´・ω・`)

そういう風に書くと「不倫絶対ダメ!絶対許さん!」ってタイプの人間に思われるかもしれないけれど、実のところ私は不倫してた親の子供だったこともある。

なので、自分的には「不倫」というものがそう遠い事象でもない。そういう自分を踏まえての感想文になります。

 

まず、この本を買った理由としては「普通の恋愛小説だと思ったから」だった。

だって、裏表紙の紹介には「不倫」なんてワードは出てきてないし、「不倫」を連想させるキーワードもない。

これは如何なものかと思う。

裏表紙のあらすじ?に出てくる「嘘を吐くこと」も「結婚をせずに関係を続けること」も「恋愛に隠されたたくらみ」も、至って普通の恋愛で起こることだもの。

短編集なので最初のお話が「不倫ストーリー」でも「最初は不倫の話なのね」と思って読んだ。

でも2話目も不倫。3話目も不倫・・・

 

かとのん
え・・・なにこれ?もしかして完全不倫短編集??

 

「不倫」に対して不快感を持っている人には、ちょっと頂けない展開になるんじゃないかと思う。

裏表紙の紹介にはここはきちんと書くべきじゃないのかなと。

 

そして本題の読書感想文ですが・・・私的には「うーん」って感じで読み終わった。なんかこう・・・きれいすぎてつまらない??

7話あるんですが、どの女性主人公も「似たような人物」ばかりで代わり映えしない。

そしてわざとなのか何なのかわからないけれど、どの話にも音楽やら陶芸やら絵画やらと芸術要素が満載です。

主人公も似たような感じ、背景も似たような感じ、そしてラストも「不倫らしいモヤモヤ感」で終わっていく全7話。

 

どの主人公も「夢見がち」で「自分本位」で「自分に酔って」て「無責任」。

不倫真っ只中の女の定番という感じ。

どこまでも己の欲望を追い求め、そしてそれを美化し、自分だけで納得し、自己完結するっていう。

 

「きれいすぎ」って思ったのは、この短編集にはドロドロ感が一切ないから。

「相手の奥さんとのモメゴト」とか「子供に知られてしまった!どうしよう!」なんていう展開のお話が一つでも入ってれば、もう少しハラハラドキドキ感もあって楽しめたかなと思うんですが、全くない!一切ない!

ただただ、主人公のとそのお相手が「不倫作業」に酔いに酔いまくって、そして勝手に嘆いて完結していくというスタイル。

なので、そりゃ、きれいだろうよってなっちゃうわけで。

実際はそんなんじゃないよねー?って思っちゃうわけで。

 

唯一、4話目の「彼女の手」は不倫される側の女性の物語だったので、少し気分が変わって前のめりで読めたかな。

そして7話目が表題作の「ソナタの夜」なんですが、「不倫相手の子供が欲しい」という件があるんですね。

そこがまぁ、、、こんなにも身勝手になれるか!?って思うほど身勝手炸裂!

けど、きっとそういう考えに至ってしまう女性も多いんだろうなとは思う。

 

不倫ストーリーは色々読んできましたが、こんなにもキレイにまとめられてるのは「2人の世界」を完全に表現しているからだと思います。

その他の人物の感情や言動は最小限に抑えられている。

「現在不倫真っ最中!」の女性には感情移入できるんじゃないかな。

どっぷり二人の世界に浸かって、「美しく純粋な愛」「叶わぬ儚い恋」に身をよじり、波のように押し寄せる感情を堪能できるんじゃないでしょうか。

”とにかく美しい”短編集だと思いました。

 

この本の評価は?

ストーリー [3.0]
感情移入 [2.0]
感動 [2.0]
ラストの展開 [2.0]
総合 [2.5]

 

ココに惹き込まれた!

表現力がとても豊かで、不倫に身を投じる女性の強く切なく儚い感情を堪能できる。ドロドロ感は一切ないので、その世界にどっぷりと浸かりたい時には最高の短編集だと思う。

 

ココが気になる!

「不倫」という括りにしても、もう少し色んなタイプの主人公、背景で読みたかった。

 

 

次回読んでみたい永井するみの作品

表現の仕方や空白の取り方などはとても好きな作家さんでしたので、次回はこちらも読んでみたいと思います。

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